千葉支部

2004年千葉支部総会・講演会のご報告 (3)

樋口奈津の生活と意見「一葉日記を読む」の講演感想

花澤怜子 (昭和30年大学食物卒 / 実践桜会千葉支部)

今年度の実践桜会千葉支部総会のご案内を頂き、11月20日を心待ちにして居りました。当日千葉駅より会場のホテル直通バスの車内でも、同窓とあれば初対面の方でも親しくお話出来る嬉しさ、晩秋の穏やかな日差しに恵まれた幕張メッセの会場まで瞬く間の道程でした。

総会に続く講演は棚田輝嘉国文科教授の「樋口一葉について」とのこと、折から新札登場の話題の人としてどのような観点からのお話かと楽しみに致して居りました。

資料画像 - 2004年度千葉支部講演会 - 棚田輝嘉先生 司会者の紹介で演壇に立たれた先生は、私の想像を越えた壮年の颯爽たる御容姿に驚かされ、又たゆみない語り口で始められた講演内容は瞠目すべきものばかりでした。

先ず先生は一般的な一葉論、文学の師であった半井桃水とのいきさつに画期的な視線を向けられます。24才と言う短い生涯に、一葉は小説と日記を遺しました。その日記から先生は気象条件と桃水への心象風景を組み合わせて抜き出されたのです。

彼女の日記に雨の記述があるとき、桃水が登場する、又桃水への心の揺れを書きつらねる日は雨の日である、何故雨の日に桃水との出逢い、又桃水を 訪う日となるのだろうか、と言うことを、具体的な事例を抽出しての内容に時を忘れて聞き入りました。

雨の日は人は家に籠ると心の内面を見詰める、心に秘めた想いを雨は心の底から洗い出させるのではないだろうか、とのお話、そう言えば一葉の代表作「たけくらべ」も、勝ち気な少女美登利と、内気な少年信如との別れは雨の日でした。又「にごりえ」のお力の切ない 幼時の記憶も雨に繋がります。

世の中が目まぐるしく変わって行く明治の前半期を、女性の才能ひとつで生き抜いて来た樋口奈津と言う一人の女性の生涯を、改めて見詰めることの出来た貴重な講演のひとときでした。

(東 由美 / 実践桜会千葉支部)