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Wild Flower -花を咲かせよう-

 

               真琴つばさ

真琴つばさプロフィール
1997年から宝塚歌劇団月組トップスターとなる。哀愁漂う二枚目男役スターとしてだけでなく、幅広い役柄で活躍。
2001年1月宝塚在団中にavexよりCD"EDEN〜黄昏はなにも言ってくれない〜"をリリース。同年7月宝塚歌劇団を退団後はアーティストとしてライブを中心に活動する他、自らのディナーショーやトークショーなどの構成・演出も手がけるなど独自の道を歩んでいる。
自身のCDへの作詞やセルフプロデュース、舞台、テレビ、ラジオ、執筆など活動範囲は広い。
ホームページアドレス
http://www.position-m.com

「あなたには、華がない。」私が、宝塚の下級生時代によく言われていた言葉です。
 だから、そんな私がトップ・スター(宝塚においては厳密に言うと、主演男役)と言われる存在になった時「まさか、あなたが…」と思われた方も多くいらっしゃったようです。 −実力・運力・引力-この3つの力は舞台の上で成功させるために必要だと思われる、私個人の研究結果です。実力は才能に時を重ねた時に、運力は自分の人生の歯車と時のめぐり合わせが一致した時に、大いに発揮される。
そして引力は…これは、生まれ持ったその人の天性みたいなもの…ずっとそう思っていました。引力は、人を惹きつける魅力・オーラ・そして華ともいえる、舞台人には欠かせないもの。ある有名な指揮者が、指揮をふる上で大切なことはこの引力であると語ったとも聞きました。人の上に立つとき、中心になる時にも、この力は必要不可決なのかも知れません。だから「あなたには、華がない」と言う言葉は、致命傷にも思っていました。
芸道という言葉には程遠い家庭環境で、芸道に生きるという道を選んだ自分。先に行くにも道は見えず、後戻りするにも道はなし…まさに“崖っぷち人生”まっしぐら!華がなくても根性で生き抜いてみせる!…夢の世界にいながらも、ハングリー精神剥き出しで頑張っていた宝塚下級生時代。

 ではその前はどうだったのでしょう…。バレーボールに明け暮れた中学時代。休憩時間は5分で菓子パンを4つも平らげ、あとは部活へ。合宿のマラソンでは、絶えず先頭集団をキープ。猪突猛進の性格が功を奏したのか、中三の時にはエース・アタッカーと言うポジションを頂きました。しかし卒業試合の数日前、遊びで腕を脱臼し、出場できず。初めで悔し涙を経験。学校の成績は半分以下。
そろそろ、宝塚受験を真剣に考え始めた高校時代。夢の力がそうさせたのか、ヤマカンが当たったのか、成績急上昇。最高でクラス2番に!
 体育の時間、クラス対抗のバレーボール大会があり、接戦の末、我がクラスは優勝。その直後同級生たちが、胴上げをしてくれたこと、今でも忘れられない思い出のひとつです。しかし、生来の寝ぼすけが顔を出し、高三の3学期では遅刻19回の赤線が成績表にくっきりと…。(この寝坊癖、宝塚の合格発表にも顔を出してしまいました)

 引力とは無縁のこの人生…学生時代から宝塚下級生の頃の私は雑草そのものでした。しかし、華とは天性のものであり、決して咲くことはないと思っていた自分という花は、時を経て奇跡的に咲かせることが出来ました。愛情という水が注がれ、友情という土に守られて…。
宝塚をご覧になられるお客様による、愛のこもった水。これは生徒を舞台人として育ててくださる大切な栄養源です。そして、友情という土。宝塚の中でも、かけがえのない仲間に出会うことが出来ましたが、それを遡ること20数年前。私は実践女子学園という世界で、恩師をはじめ、多くの素敵な友を得ることが出来、今もなお、その絆は私という花の根に息づいてくれています。

 イベントがあるたびに、駆けつけてくれる恩師や友たち…。初舞台から数えて20周年を迎えた今年、記念コンサートをしましたが、その際も忙しい間を縫って大勢で駆けつけてくれました。この同志たちの応援が、咲く事はないだろうと思われていた華を咲かせるパワーをくれました。
こんな素敵な人間が集まる実践女子学園は私の誇りです!宝塚で一花咲かせることが出来た自分…。人は誰も、花を咲かせる種を持っています。そして、その花は何度でも咲かせることが出来ると信じています。宝塚を退団して約4年。また、新たな花を咲かせるために、ただ今邁進中です!!