関西支部

関西支部総会に出席して                     黒瀬 朝子
(昭和 14 年専家卒)
 どこからともなく漂う金木犀の香りにはっとするこの頃、秋にしてはやや汗ばむ文句なしの好天に恵まれた 10 月 12 日、第 74 回実践桜会関西支部総会が開催されました。場所はリーガロイヤルホテル・桂の間。
 波乱万丈の1世紀近くを生き抜いてきた昭和 14 年卒の私には、参加の一回、一回が貴重な思いです。今年も来れたしと。
 東京本部からいらっしゃった理事長の若松様、入試センター部長窪田様のピンと背を張ったご報告、女子教育の大切さを訴えた学祖下田歌子先生の志をどこ迄も伸ばしていこうとの取り組みに、会場の空気も引き締まって心打たれました。
“志を継ぐ若い人々”かつての学び舎が暖かく老いの身を包んでくれます。
 2 期 4 年間、関西支部長として、支える役員の皆様ともども緊張の日を過ごされたと思う紅林様が惜しまれながらのご引退、まことにご苦労様でした。
参加者の最高齢は昭和 11 年英文卒の白井様 91 歳。耳も目もしっかりと、会計監査として承認のお声もはっきりして感動的でした。老舗「つる家」の心こまやかな秋の味覚を頂きながら、矢張り学生時代の思い出に花が咲きます。
 白井様はご本人が希望して神戸から上京、寮生活。しかし卒業後キナ臭くなった日本で英語は敵性語、高校教師の免状をもちながら小学校の代用教員をさせられましたが、敗戦後は英語教師が足りないと、一足飛びに高校英語教師に抜擢された由。歴史に翻弄された私たちでした。
 歴史といえば西暦なら皇紀 2600 年の祝賀に、在京の大学、専門学校の音楽部の学生による千人の男女混声大合唱が日比谷公会堂からラジオ放送されたのです。実践にも音楽部があり、部活で何をしたのか全然覚えがありませんが、先生 ( 名前失念 ) がベートーベンの「田園」がお好きで、絶えずあのメロディーが教室に流れていたことが耳に残っています。今の東京芸大、当時は上野音楽学校の苔むした ( だったと思う ) 階段教室に練習に行ったものでした。市電電車賃 5 銭でしたが、 30 銭のタクシーに 6 人が詰めて乗り。 曲目はハイドンの「天地創造」やシューマンの「流浪の民」など……。
 第二部講演会は、大阪大学医学部附属病院教授・笠山宗正先生を講師にお迎えしました。内分泌の権威で若々しい先生でした。演題は「ホルモンと病気・ホルモンと健康」。ホルモンとは焼いて食べる内臓のことではなく ( 笑 )  内分泌から分泌される化学物質で、“よびさます”ギリシャ語でホルマオ。プール一杯に小匙一杯ぐらいの濃度での作用。よびさますとはすごい言葉とうなづかされました。
 私も80歳の声を聞くまでは元気印で飛び回っていましたが、とたんにガタがきて、今回も総会の出欠を迷ったほど。高血圧、心臓肥満、何れも身に覚えのある症状でした。油断なく絶えず我が身に問いかけ、データを取ること。その積み重ねが老いの身に結果としてあらわれることを改めて反省させられました。

2006 年 10 月 15 日
黒瀬朝子  86 歳

天地創造の歌詞
きみは神 あらひとがみ
あめ土しろしめす……

 
 
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