科会だより

   
 

実践技芸科会と日本刺繍

日本刺繍の歴史と変遷

 専門学校時代、技芸科の名称は終戦の昭和20年を最後に被服科と改変されたが、当時技芸科にとって日本刺繍は、刺繍科の中でも裁縫科とともに重要な正科であり、上村百代先生・山中田鶴先生・藤田スマ子先生・箸尾清先生他、有名な多くの先生方がご指導に当たっておられ、服飾が主な目的だった当時は、作品が直ちに生活の潤いとなって生かされ、日本刺繍にとっても大変恵まれた時期であったと思う。

[資料画像 - 日本刺繍の教室「萌黄会」のひとこま  その後、戦争という不幸な時代を迎え、しばらく消息不明の期間が続いていたが、その間も特技を生かして教壇に立つ人、また自ら教室をつくり、更に深く広く後進の育成に尽すかたわら、次々と新作を発表している人、それぞれに各地で活躍を続けて今日に至っている卒業生が多い。

 このたび作品をお出しいただいた澤田尋様は、白香会より上野の「三軌展」に毎年大作を出品し、入選されており、草野てい子様は長年「彩繍会」を、吉田百合子様は広島の地で「百合の会」をそれぞれ主催し、共に多くのお弟子さんの指導に当たりながら、自らもすばらしい作品展を開催している。
  桜会会館においても、現在「白香会」「萌黄会」が日本刺繍の教室として、毎月定期的に開催している。

澤田尋さん (昭16年専技卒) の作品
草野てい子さん (専技卒) の作品
吉田百合子さん (昭20年専技卒) の作品      ギャラリー(日本刺繍)へ
おことわり
  日本刺繍は非常に繊細な工芸です。このウェブ・サイトに掲載されている写真画像では、作品の本来の美しさは表現しきれません。ご興味をお持ちの方は、ぜひ作品に実際に触れてみてください。

(中岡/実践技芸科会)